小早川隆景は、毛利輝元にとある相談を受けます。(輝元は隆景の甥っこ)
「隆景おじさん、そのうち毛利家で新しい城を造ろうと考えているんですよ。
広島城は、平地にあって防御力が弱いから、山の上に強力な城を造ろうかなって…
どう思います?」
しかし、隆景の答えは「新しい城は造るな」
え、どうして?
どうして、戦国大名なのに立派な城を造っちゃいけないの??
これには、隆景の深淵なる計略が潜んでいました。
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広島城を新しく建てようか?
毛利輝元の居城は広島城。
しかし、この広島城は平地にあるので、敵の目から見たらめっちゃ攻め易い。
そこで、輝元は毛利の重臣たちと、城の新築について話し合いました。
「山の上に城を建てて、もっと守備力を挙げた方がいいんじゃないか?」って。
すると、小早川隆景が言いました。
「城を作るのは、国の一大事。
ならば、戦の天才である黒田官兵衛に、意見を聞いてみよう」
そして後日、官兵衛が広島を立ち寄った時に、城の件を相談してみました。
すると…
「今の広島城は、平地にあるから『戦国最強』って、ワケにはいきません。
でも、皆さんが思ってような、悪い城ではないんですよ。
ボチボチです。
また、新たに城を新築するコストを考えたら、現状の広島城を大事に使った方が良いかも」
と、言う話。
隆景はこれを輝元に伝え、城の新築を止めさせました。
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秀吉の酷評
その後、豊臣秀吉が九州征伐のため、毛利を訪れた時の事。
「あちゃ~、なんじゃこの城は?
ここは地形が低いから、水攻めを食らったら一巻の終わりじゃないか?
めっちゃ弱そう、ダメだこりゃ!」
これを聞いて、輝元はガックリと肩を落とします。
「平地の城はマズいんじゃないかな?と思ったら、やっぱその通りじゃん。
隆景おじさんの事は500%信頼していたけど、城の事は思いっきり裏切られた!
今度会ったら、絶対に文句言ってやる」
ところが隆景はそれを聞いて、こう言います・・・
ショボい城で毛利を守る
「ナニ?秀吉様が広島城を見て、ボロクソに言っただと?ホント?
こりゃ傑作だ!それでいいんだよ」
「おじさん!なんてひどい事を言うんですかっ!僕のことをバカにしてますね?」
「違う違う、そうじゃないんだって。いいか、良くき聞けよ…」
隆景は、今回の件を輝元に説明してやりました。
「あのな、広島城がショボいことは官兵衛も見抜いていたよ。
ただ、彼は秀吉様の手下だから、本当の事を言わない。
しかし、そこをあえて相談して、こちらは逆算して本音を探る。
で、やっぱり広島城は『ショボい』と分かる」
「でもな、城がショボいって良い事なんだ。
毛利みたいな巨大大名が、最強の城でも持ってみろよ。
絶対に警戒されて、つまんない事で因縁吹っ掛けられて、結局どこかで損をする。
それだったら、わざとショボい城に住んで『毛利はでくの坊』の振りをするんだ。
そうすりゃ、人を怖がらせないで済むから。」
「でも万が一、戦になって強い城が必要になったとするだろ?
その時は、毛利の領土内には、ガードの堅い城がたくさんあるから大丈夫だって。
まぁ、秀吉様はそれに気づかず広島城をコケにしてたくらいだから、しばらくは心配ないよ」
この時代に入ると、秀吉の力が強すぎて、もう誰も逆らえない状況。
強さで対抗しようものなら、たちまちケタ違いの大軍が襲ってくる。
では、どうやって生き延びようか?
そして、それに対する隆景の答えが「弱そうな広島城」であり…
または「小早川秀秋」でありました。
(一見すると、どこが優れている計略か分かりずらいんですが)
武力や兵の数は敵いませんが、先を見越す力は秀吉も官兵衛よりも上回っていたようです。
オヤジさん譲りの智謀で。