毛利元就は、実直な人間なのでヘラヘラとおべっかを使う者が嫌いでした。
口先だけ調子よくて、腹の中じゃいやらしい下心が渦巻いている…
でも、元就ぐらい偉くなると、必ずそういうヤツがすり寄って来るんですね。
今日は、そんな不届き者を元就が一喝する話。
ウィットに富んだ返し言葉で、スカッと一発撃沈です。
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「法橋恵斎」と言う儒者
儒者の甘言を真っ二つ
日本では昔から、学問として儒教が学ばれていました。
でも、それを教える先生は京都とか鎌倉とか、せいぜい足利学校にしかいません。
しかし、応仁の乱で都市部が荒れてくると、地方の大名や武将を頼るようになります。
で、毛利家にもソレ系の学者が仕えていました。
名前は『法橋恵斎』(ほうきょうさいけい)と言います。
別に覚えなくていいです。
それほどの者じゃないですから。
この法橋恵斎は、頭はいいです。
また、知識も豊富です。
学者なんで、人からも尊敬されています。
で、その法橋恵斎が、元就にこんな事をしきりに言うんです。
「元就様の造った国は本当に素晴らしい。
それは、まるで殷の湯王、周の武王の時代のようです!」
(元就を中国の偉い王様に例えたんですね…)
すると元就は…
「あ~、それは惜しいところですね。
とりあえず、殷や周には敵わないと思います。
湯王や武王の時代には、あなたの様なチャラいお調子者はいませんでしたから…」
真正面から、ぶった斬り。
でも、ちょっと?堅苦しい感じがしますね。
冗談が通じないみたいで。
ただ、これにはワケがあるんです・・・
乱の兆しは心の中に
・・・人のこと褒めるのはいい。
でも治世ってのは、地域や時代によって変わって、それぞれの苦労や難しさがある。
それなのに、とりあえず中国の偉い王様の名前もってくりゃ良い、、と思いやがって。
どうせおだてるんなら、もう少しマシなセリフ持って来てくれ。
あと、大事な注意点が一つある。
ショボいお世辞でも、10回に1回くらいは真に受けて喜んじゃうんだよ、人間は。
これが凄い危険。
学者は頭が良いから、そのへんが上手い。
思わず「なるほどー」って思ったり、心から嬉しくなっちゃうんだよ。
時々は。
でも、それは本物の知恵ではない。
人を貶める毒だ。
だから、そんな連中を簡単に信用してはいけない・・・
元就は、お世辞は全部ダメ!と言ってるワケじゃないです。
でも、人はそれを好む傾向がある。
気の合う仲間を集め、自分にヘーコラ従う者をひいきにする。
思わず、それをやっちゃう…だから、気を付けよう。
これは、元就自身はもちろん、各部署のリーダーをやる人たちも忘れてはならない心得だ…と、しています。
しっかり気を付けないと、心の隙間にスッと入り込む甘い誘惑。
そして、そこに乱の兆しが生じて来る。
分かりずらいからこそ、平素から気をつけるべし…とする元就でした。
だからこそ、あえて法橋恵斎の言葉を強く退けたんですね。